■こんにちは、始めまして。 <hello!I love you!> |
これといって平凡過ぎる月灯りの夜、それなりに聞こえる虫の音…普通の値段の宿。 ここの所、何かとドタバタしてたからか、欠伸が出そうなくらいの微温湯みてぇな緩い1日の 「……な…っ…」 何だ、何なんだ。この状況は。 俺はただ、もう寝ようと思ってベッドに乗っただけなのに。 「ヒスイ」 仰向けに腰を下ろし、少しばかり体勢を後ろに崩している俺の上に、乗ってきたのは。 「…テメ…ッ、何してんだよっ!」 「え?ヒスイを見てるだけだよ。」 いつもと変わらない、馬鹿正直で直線過ぎる眼差しなのに、いつもとは違う落ち着いた声が …何だ?…何なんだよ…。 この状況とか、変に落ち着いているコイツとか、怒鳴り声の一つも上げられない俺に対し、 消化不良な感覚の、気持ち悪さ。 「何だよ…つーか退けよ。俺はもう寝るンだよ」 情けないことに、俺の口から漸く出たのがこの一言だけ。 何故だか怒鳴る事は上手く出来なかったが、これくらいの無愛想さは出せた事に少しだけ コイツは俺がこうやって撥ね退けるなり、殴りつけるなりすれば大人しく離れるから、それ いざとなれば、俺の方が多少体格はいいんだから、押し退ける事だって出来る。 手元にソーマがあれば、ぶっ飛ばすのはもっと楽なんだが。 「………」 「………」 アレやコレやと思案している間も、シングの目線はずっと俺に向けられていて。 暫く黙っていたものの、流石にもう限界だ。野郎に組み敷かれた状態で気分がイイ訳ない。 「テメェ、そろそろ退――」 「ヒスイってさ」 「…あン?」 痺れを切らし苛立つ声を向けたと同時に、シングからの言葉にうっかり聞き返してしまう。 「……」 「何だよ、言いたい事あンなら言え。というか退け。」 再び何か考え込むように口を閉ざし、じっと見つめてくる瞳に、とりあえず話くらいは 不快を表すように眉を寄せて見返してやっていれば、再びシングの唇が開いた。 「…綺麗だよね。」 「………はぁ?」 ……殴りてぇ。 こんだけ時間をかけ、こんな体勢で言いたい事がソレかよ。 正直、殴るだけじゃ済ませたくねぇが、とりあえず拳で殴ってそれから蹴り上げて―… 目元を引き攣らせ、怒りに戦慄いている俺を他所に、シングは言葉を続け。 「コハク見てて思ってたんだけどさ、確かにコハクは可愛い。同じ兄妹だからかな、 「……てめぇ、結局行き着く先はコハクってか。ふざけた事ぬかしてんじゃ…、…」 失礼な奴だ、と俺は怒りに頭がいっぱいになり、真上に位置するシングに拳を振り上げ 自分の怒りは、今何処に向いた? コイツがコハクの事を見ていること? コイツがコハクに好意を向けていること? コイツが、コハクの事を語ること? 失礼な奴だ、って…何に対して? ぐるぐると不可解な心境に目を回しそうになっていると、シングが小さく笑った気がし、 「痛っ」 「煩ぇ!いいから退け!」 「あはは、うん。そろそろ退くよ。ヒスイに嫌われたくないし」 何がそんなに可笑しいのか、シングは口元に小さな笑みを携えたままゆっくりと俺の上から 漸く嫌な位置から解放された俺は起き上がり、ベッドに座ったままシングを睨みつける。 大人びた…というより、嫌に余裕のあるシングの表情が気に食わない。 「……ハッ、将を射んとすれば―ってヤツか?生憎だが、俺はコハクのスピルーンを 「…うん、知ってる。俺はちゃんとコハクのスピルーンを元に戻すよ。絶対にね。」 「当たり前だろうが!」 そうだ。あの事件さえなければ、コイツと今こうして一緒にいる事なんてなかったんだ。 そう思ったら、当時を思い出して沸々と怒りが湧き上がり出す。 だが、こんな夜中にこれ以上怒鳴り声を上げていてはベリルとイネスが部屋に来るかもしれない。 シングはその場から動かないまま、何を考えているのかにっこりと笑いやがった。 「コハクのスピルーンを取り戻したら…ヒスイは俺を認めてくれるんだよね?」 「誰がお前なんか認めるかっ!」 「あはは、厳しいなぁ…でも、いつかはちゃんと俺の事、『認めて』くれると嬉しい」 「だから認め―――」 「ヒスイ」 切りのない言葉の応酬を打ち切ろうと振り返った瞬間、俺の名を呼ぶシングの顔が間近にあり、 眼を丸くしている俺を見て、シングは再びにっこりと笑みを浮かべ。 「うん、やっぱり綺麗だ。」 何が。どこが。 問い掛ける言葉が、声に出ない。 不覚にも、コイツの言葉が俺のスピリアにストン、と落ちた心地がしたから。 「おやすみっ、ヒスイ!」 そう言ってシングはニカッといつもの笑みを見せれば俺から離れ、部屋を後にした。 「…は……」 呆気に取られた、というよりは何だかスピリアごと一時的に引っこ抜かれて戻されたような感覚。 何だアイツ。ゼロムか何かか?ってくらい、俺のスピリアに不可解な波を起こし、勝手にどっかに行きやがった。 ……今の一連の出来事は、アイツが単にコハクと結ばれる為の言動だと、思いたい。 →オマケ(シング+クンツァイト) |
■■■ ハーツ小説1作目!!!当サイトはヒスイ受け至上主義で逝きたいと思っちょります!!! 原作を視野にいれつつ、の妄想なのでシングが腹黒く見えますが、まぁそれは良い子主人公が 攻めの時に自動で付くオプションみたいなものですよね!!(笑) それでは、読んでくださり有難う御座いましたvv |