■My dear baby, <後> |
どうやら依頼人はそれなりに地位の高い貴族だったのか、ゼロスは飄々としながらも 「あの子は・・どうする?」 ロイドがクラトスに問い掛ける。 どこに?と三人はそれぞれ自分に問い掛ける。 だが、あの赤子はハーフエルフだ。
「いや、ダイク殿にそこまでしていただく訳にもいくまい。」 「セレスのとこは・・・難しいか・・やっぱ」 「うーん・・・一度皆のとこへ戻ろうか。それから考えようぜ」 そう、ロイドが提案し、三人は仲間が待つ宿へと歩を進める事にした。 「・・・・え?見つかった?」 「えぇ、つい一時間ほど前に。」 宿へ戻ると、ずっとフロントで待っていたのか、リフィルが三人にそう告げた。 「あの子の母親の妹さんがあの子を引き取る事になってたらしいんだけど…引き取りに 「・・・そう、なんだ・・・・」 気が抜けたように声に力の入っていない返事をするロイドに、 「・・別れが来るのは仕方のない事だわ。私達もずっとあの子の面倒を見切れるという 「あ、いや・・別に残念とか思ってるわけじゃねぇよ・・ただ・・」 「・・・・・大丈夫よ。引き取る時にその妹さんは涙を流しながら嬉しそうに微笑んで ロイドを安心させるように、リフィルは優しくロイドの頭を撫でながら言った。
夜。 クラトスはニ・三日ぶりに落ち着いてベットに横たわった。 散歩に出歩いたり赤子を抱きつづけていたりと、ずっと起きていたのだ。 思えば、四六時中一緒に居たような気がする。 その、赤子独特の柔らかな温もりが消えた今、なんとも言えない喪失感をクラトスは感じていた。 「・・・・・・・・・・・ふぅ・・」 短く息を吐き、その感覚を忘れて睡眠を取ろうとする。 「・・・どうした、こんな夜分に」 ドア越しにいる人物に予想がついているのか、クラトスはベットから降りずに尋ねた。 すると、静かにドアを開けながら、ロイドが顔を覗かせる。 「いや、何となく・・・な」 言い難そうに視線を泳がせながら、ロイドが答える。
ロイドが話を切り出す。 「アンタ・・あの子がいなくなって寂しい・・だろ?今日あれからずっと元気ねぇし・・」 「・・それはお前の方だろう?」 ロイドの言葉に、クラトスはそう返した。 「まぁ、確かに俺も何というか・・心に少し穴が空いた気分だったけどさ…アンタは…… 言われた言葉に、クラトスは少しだけ言葉を失う。 今は目の前に居て、こうして話し掛けてくれているが、一度は妻とともに死んだと思い、 その時に心に空いた穴は、相当に大きなものだったのだとロイドは理解していたのだろう。 だが、あの赤子が居なくなった今、もしかしたらクラトスの『かさぶた』は そんな息子の気持ちに気付き、クラトスは悲しげにだが、優しく微笑んだ。
ぽつりと口から漏れた言葉に、ロイドは「そっか・・」と相槌を打つ。 今、目の前に居るロイドは紛れもなく愛する我が子だというのに、どうしても感情は だから余計に、あの名も知らない赤子の世話を焼き、愛しく思っていたのだろう。 悲しげに瞼を伏せるクラトスに、ロイドもそんなクラトスに小さく苦笑する。 そしてそのまま優しくクラトスを抱き締めた。
まるで、泣いている者を慰める口調で言うロイドに、クラトスは本当に涙が出そうになった。 もう二度と、この温もりが感じられないのだと思っていたから。 「私は・・失っていなかったのだな・・」
この、柔らかな温もりを。 「?」 「・・・フ・・・独り言だ・・」 呟いた言葉が聞こえなかったのか、首を傾げるロイドにクラトスは小さく笑う。
「俺さ、あの子を弟みたいに思ってたみたいなんだ」 隣で横たわるロイドが、ぽつりと呟く。 「最初は何だかクラトスを・・父さんを取られたみたいな気分であんまり思わなかったけど… 天井を見ながら話すロイドを、クラトスは黙って見詰める。 「なんて言うか…やっぱ俺、あの子に嫉妬しててさ…面白くなかったんだよ。 へへ…っ、とロイドは子供のように歯を見せながら苦笑した。
「…何だ?」 「アンタ、もう再婚とかする気ねぇの?」 「…な…っ!?」 突然言われた言葉に、クラトスは驚きを隠せない。 「俺、もうでかいしさ、母さんもいないし…アンタ結構子供とか好きだろ? 「何を馬鹿なことを…」 「でも……いや、悪い。馬鹿な事言って。」 そう言って、ロイドは左腕を額に乗せた。 だからクラトスは、今のロイドの発言に対して怒りや悲しみを感じる事はなかった。 「…私はもうそんなことをする気はない。今でもアンナを愛しているし……何よりお前はまだ 言いながら、クラトスはロイドの頭を優しく撫でる。 「・・・・・・・・・・・・」 すると、ロイドがもそもそと布団の中を動き、クラトスの懐に抱きついてきた。 「……ロイド?」 その行動に、クラトスは少しばかり驚く。 「……別に俺がして貰いたいワケじゃねーけどよ…クラトス、あの子が居なくて寂しいんだろ? 気恥ずかしいのか、それを隠すように口を尖らせながらロイドは強くクラトスの身体を抱き締めた。 「…そう言うことにしておいてやろう」 「……なんだよ、ソレ…」 ポンポンと軽く背を叩くクラトスに、ロイドは嬉しそうに苦笑した。
温かい、と感じながら。
世界にたった一人の、同じ血が通った者同士だからこそ感じる温かさなのだと
* * * 「・・・・フ・・・どうしたものか・・」 珍しく起床が遅いクラトスを起こしに来ていたリーガルが、その光景に思わず微笑む。 「ん〜?どーした??」 そんなリーガルに、ゼロスが顔を出す。 「なるほどね・・・」 「起こすべきだろうか?」 「そんな気更々ないっしょ?・・・あと10分くらい、寝かせてやるか。」 微笑みながら言うリーガルに、ゼロスは笑いかけ、踵を返して廊下を歩いた。 「そうだな。・・・・たまには寝坊させても良いのかもしれん」 リーガルがそう言いながら閉めた部屋の中の光景は、クラトスとロイドが互いを抱き締めて
■■■■ たまにはこういった『親子』的な物を打ってほのぼのしたくなります。 ホラ、やっぱクラトスだって親ですから、父性だしてもいいと思うんですよ!(笑) そんでもってロイド君にも嫉妬とかして欲しいんですよ!!ってゆーかロイドは もし本当に弟か妹が出来たら時々こういう嫉妬しちゃうような気がしません? 子供だなぁ・・・(微笑) それでは、読んで下さって有難う御座いました★ |