■美しき日々(ガイ×アッシュ)


時間が無い。

 

焦っていても何もいい結果なんて生まれないのは知っている。

だけど、そうだけれども。

焦らずには居られない。

自分には、もうどれくらい時間が残されているかも分からないのだから。

 

もしかしたら、明日かもしれない。

もしかしたら、あと一時間後にはこの命は尽きているかもしれない。

焦らずにいられようか?

 

もっと、もっと早く。

もっと、もっと沢山。

 

やれることはしておきたいんだ。

 

 

 

「…ぁ…?」

意識が浮上し、うっすらと目を開けば。

視界に、初めに映ったのはよく知る人物。

 

黄色い髪の、幼馴染。

使用人。

友。

復讐者。

そして、恋人。

 

「…ガイ…?」

 

その名を口から洩らせば、目の前の人物は強張っていた顔を少し安堵に緩ませた。

 

「アッシュ…よかった…」

「ど…してここに?俺は…」

「あ、馬鹿!まだ起き上がるな。」

 

ガイの胸元を軽く押し退け、起き上がろうとすると止められた。

それに少しだけ顔を怪訝に歪めながらも上体を起こすと、くらりと意識が混濁する。

 

「…、…っ」

 

…あぁ、そういうことか。

情けなくも自分は疲労や貧血で倒れたらしい。

まぁ自業自得だろうな。

時間を惜しむあまり休息や食事を抜いて戦ってきたから。

 

「お前、ろくに休んでないんだろ?」

 

またその場に横たわると、呆れたような声でガイが言う。

 

「………」

 

返す言葉が無くて、アッシュは押し黙る。

 

「丁度俺たちもここに居てよかったな。…ギンジが泣きそうな顔で俺のところに来たぞ?
『アッシュさんがー
!!』って。」

「…あの馬鹿…」

「ギンジはちゃんとお前のプライドを考慮して俺だけを探しに来てくれたんだ。
…ルークやナタリアに見られたくなかったんだろう?」

舌打ちするアッシュを咎めるように、ガイはその額を軽く小突いた。

確かに、ルークやナタリアが駆けつければアッシュは持ち前の意地っ張りで
無理にでも起き上がって立ち去るだろう。

色々と考えても、ガイが適任だとギンジも判断したのだろう。

ガイならば、アッシュもそこまで意地を張ることは無い、と。

 

 

「アッシュ…無理はしないでくれよ?」

「……」

「確かに、世界は危ない。お前は責任感も強い。だけど、それ以上に…
俺はお前が心配なんだ。無理するくらいだったら俺たちを頼ってくれ。」

「…フン」

「…アッシュ。」

「何…、…っ!?

 

突然名を呼ばれたかと思えば、ガイの顔が近づいて唇が触れ合った。

不意を突かれ、更に横になっていたこともあり、アッシュはそれを避ける事も
出来ずそれを受け止める。

 

「…は、んむ…」

 

ゆっくりとした動きで、幾度か角度を変えては深く交わる。

相手を宥め、あやすような優しい口付け。

 

「…愛してる。だから、無理はしないでくれ。」

 

唇が触れ合うほどの距離で囁かれた言葉に、アッシュは動きを無くす。

 

あまりにも優しい相手の表情に見惚れてしまったから。

あまりにも愛しい相手の言葉を貰ってしまったから。

心臓どころか、魂をも鷲掴みにされたような感覚。

 

「…ぁ、…」

 

思わず、口から出そうになった言葉を飲み込む。

 

「アッシュ?」

「…もう、大丈夫だ。俺はそろそろ行く。」

「…そうか。分かった。無理はするなよ?」

「…わかってる。またな、ガイ。……ありがとう」

 

これ以上その場に居たら、自分は何を言うかわからなかった。

そのまま、ガイといる時に消えてしまうことが出来たら、なんて。

 

自分にはそんな生易しい一時を過ごす時間なんて無いというのに。

いつ、死ぬかもわからない。

だから、急がねばならないというのに。

 

 

この世界を、守りたい。

ヴァンを、止めたい。

それが出来るのは、自分。

そして、それが自分の生まれた意味。

『聖なる焔』として、生きる意味。
たとえ、燃えカスとなったとしても。

 

 

「…簡単に、消えてたまるか…」

 

幾分か休息したとは言え、未だ身体は疲れを訴えている。

それでも、アッシュは歩いた。先に進む為に。

 

個人としては、世界なんてどうでもいいかもしれない。

ただ、守りたい人がいる。

だから、守る。それだけだ。

 

 

俺は近い未来、消えてしまうだろう。

だけど、ただ死ぬなんて無様なことはしない。

 

「…ガイ…」

 

この命、お前にくれてやっても惜しくは無い。

でもお前は俺をもう殺そうとはしない。

だから、俺は。

 

 

 

お前の生きる世界を守る為、この命を燃やし尽くすと、決めた。

 
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久々のガイアシュ。うん、毎度の事ながら雰囲気小説ですよね;;orz
意味不明だらけでごめんなさい;;
今回はCocco『美しき日々』です。
穏やかなメロディですのv


それでは、読んで下さって有難う御座いましたv