■カウントダウン(フリングス×ジェイド前提:フリングス←ジェイド) |
「ご気分はどうですか、少将。」 無感情な表情で、足元に無様に転がっている相手を見下ろす。 其処彼処に散らばり、床を汚しているのは愛しい彼の血。 部屋に響くは、彼の苦しげな呻き声。 体内を蝕む毒素が苦しいのだろう。 今、彼の体内には致死率は低くとも苦痛を与える毒素を数本、注入しているのだから。 解毒薬は、私が持っている。 「…じぇ、いど…」 「私と貴方は他人なのですよね?ならば、そちらの名で呼んで欲しくはないのですが。」 「ジェイ…ド…」 何度、これを繰り返しただろうか。 何度、この人は私を失望させるのだろうか。 自分の足元に、転がる愛しい人。 変わらず、愛しいままの人。 マルクト帝国軍内でも一際、栄えある階級にその名を置く人物。 理性に忠実で、忠義をつくし、堅実な人。 でも、私の前では。 二人きりの時は、その鎧を脱ぎ去る。 それが、堪らなく私に優越感を与え、愛というものを感じさせていた。 いつしか私は、この人に心の奥まで蝕まれていたというのに。 「…無様ですね、少将。」 「…、…」 冷たく、そう言い放つ。 彼は自分の下の階級の者に、いや、自分を裏切らないと思ってた者からの仕打ちに、 絶えがたい屈辱と悲しみを今、受けているのだろう。 それがどうした、と思う。 私は、もっと残酷な感情で心を砕かれたのだ。 「おめでとうございます、少将。結婚の日取りはいつでしょうか?」 「…ジェ…イド…」 顔が見たいから、その場にしゃがみ込めば。 酷く辛そうな貴方の顔が。 あぁ、口から血が滴り落ちている。 「貴方は私を、貴方無しではいられなくなるほどにしたのに。 貴方は、簡単に私から心を離したのですね。」 「違う、ジェイド…!」 「すみません、聞きたくありませんので。」 そう言って、彼の腹部を蹴り上げる。 鈍い音が、聞こえた。 まだ、まだ。 貴方から、あの言葉を聞くまでは。 あの言葉を聞ければ、私は。 「…私は本気で貴方を愛していましたよ、少将。」 爪先で、愛しい者の頤を持ち上げる。 早く、早く。 あの言葉を言って欲しい。 「それとも、貴方は一時の気の迷いで私を愛したのですか?抱いたのですか?」 冷たい眼光で、相手を見つめる。 嘘だと思いたくない、あの幸せだと思えた日々を。 「違う…私は、確かにお前を…」 苦しい呻き声を押し殺し、弱々しい声で、言葉を紡ぐ人。 ああ、毒なんて飲ませなければよかったかもしれない。 この人の、こんな哀れな姿を見なくて済んだ。 だが、もっと無様になればいい。 もっと、屈辱に塗れ、誇りも、何もかも失ってしまえばいい。 それでも、私は貴方を愛せると全てに誓えるから。 「…愛している、ジェイド。」 その言葉が偽りではないと、その瞳の色で確信した。 ああ、この目は真実だけを映している。 「アスラン…」 頬笑みを向け、血塗れたその身を掻き抱く。 そして互いに深く口付けをした。 彼は、毒にその身に苦痛を刻まれているというのに、深く、深く私へ口付けを。 その首に、私は手にしていた解毒薬の入った注射針を、突き刺す。 口付けの甘美な味に、酔いながらも愛しい者への命を救う薬を、数本、打つ。 ああ、この人はやはり私が愛したままの、気高く強い人だ。 何も変わってはいない。 常人ならば、この毒素の責め苦に耐え切れずに発狂しててもおかしくないから。 私の為に、私の為に。 それを耐えてくれた。 「セシル将軍のことは、戦争というストレス下での過ちだったのだと、 そしてまた。 私は顔を笑みに歪ませ、注射針を手にしていた。■■■■ フリジェイで『カウントダウン』(笑) フリジェイの神である桃さんのフリングスとジェイドに憧れすぎた産物です(笑) 基本的に、普段はフリングスが鬼畜なんです!!でも今回はそれに染まったジェイドが 『真実の貴方を思い出して』的な考えでこんなことを…みたいなv(ぇ) それでは、読んで下さって有難う御座いましたv |