■けもの道(フリングス×ジェイド)

人は、己とは異なものを受け入れることは容易ではない。



―例えそれが、己が罪であろうと。

―例えそれが、その罪が生んだ悲しき産物であろうと。

…例えそれが、愛する者であろうと。





ソレを見た瞬間、我が目を疑った。
いや、記憶すらも疑いかけた。
ソレが何なのかはわからないわけではない。
だが、それでも姿形はそのもの。

忌まわしき罪の産物。
愛しき者の影。


「―…アス、ラン…」

生まれたばかりであろうソレには呼称なんてあるわけもないのに。
その名は今は亡き人の名だというのに。


コレは、『あの人』では無いのに。



間違えるな。
違う。
コレは彼ではない。
姿形が同じなれど、私が愛した彼はもう存在していないのだ。

「…、…!」

自分にそう、言い聞かせる度に拳を硬く握り締めては感情の波を押さえ込む。


レプリカ。



「…ッ!!」

宿に戻り、強く壁に拳を叩き付けた。
違う。違う。
アレは彼ではない。
そう、自分で自分を押さえつける。

嫌だ。嫌だ。
アレは彼でもあるんだ。
私の愛した彼だ。
中身は違えど、外見は全く一緒。

惑わされるな。
それでも好きで堪らない。

矛盾した想いが、思考回路を焼くようだ。


是ほどまでに自分の生み出した技術を、あの複製した存在達を憎んだ事は無い。

私を血迷わせるな。
私を捕らえるな。
違う、嫌だ。違う、違う、違う!

言葉にならない。
言葉に出来ない想いに理性を失いそうだ。
私には、それは許されないというのに。
再度壁を強く叩き、ベッドを叩き、そのまま伏せる。


「アスラン…」

想いが強過ぎて、罪が重過ぎて。
雁字搦めに縛られ、沈められていく感覚。


記憶に残る面影が、一層私を苦しめる。


彼を愛している。
彼を模した存在が憎らしい。

愛している。愛しているんだ。苦しいまでに。


でも、こんなにも…


彼が。


「………」



憎い。



矛盾し、混ざり合い。
歪み始めた感情。


「…アスラン…」


言葉と共に、涙が一粒零れ落ちた。

雫を生み出した瞳には、赤い譜陣が薄闇の中で存在を主張している。




彼を、この手で殺したいと、思った。


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UPし損ねていました…;フリジェで愛憎ドロドロv
愛憎といってもジェイド一人の葛藤ですけどね(笑)

それでは、読んで下さって有難う御座いましたv