■死神の従者■

「待ちなさい、ジェイド!」
「やれやれ…貴方も大概しつこいですねぇ…」

追い掛けて。


「そろそろその悪趣味な格好を止めて頂けませんか?目に悪影響が及びそうです」
「キーッ!この華麗なるファッションセンスを馬鹿にしてぇー!!」

追い掛けて。


そんな貴方を、ずっと見ていました。
ずっと、ずっと。






「ライナー」

窓際から入り込む陽光で白く溶け込むような姿に、ぼんやりと見惚れる。

「ライナー?」

その唇が開かれ、何か言葉を紡がれるだけでとても耳に心地よい。
それが自分の名ならば、尚のこと更に。

「どうしましたか、ライナー」
「…、…!は、はい」

顔が近づいた瞬間、目を見開き我に還る。
それと同時に、少しばかり頬が熱くなった。

「寝不足ですか?あぁ、最近貴方は忙しいようですしね。何なら、今日は午後から休暇を取って貰っても構いませんよ?」
「いえ、大丈夫です。有難う御座います、ディスト様」

手袋を嵌めながらも私を気にして掛けて下さるお優しい言葉に、私は胸がいっぱいになり軽く会釈をして御礼を述べる。

「そうですか。…あぁ、私はこれから…そうですね、5時間程外出します。」
「はい。わかりました。」

鏡を見ながら髪を手で直すディスト様。
その間、私は今日のお召しに似合う色合いのネクタイをクローゼットから取り出す。
普段とは違い、シャツのボタンは留められている。
正装をされていることから、恐らくモース様の命でキムラスカの方への外出なのだろう。


洋服一つ、仕草一つで貴方の事が理解出来る事が、とても嬉しい。
少々潔癖症のある方だと言うのに、ネクタイを締めるのは私の役目となった。
誰よりも信頼されていると、自惚れてもよろしいのでしょうか?

全てが嬉しく、貴方の言動一つで私は一喜一憂してしまう。
敬愛なんて言葉よりももっと、私は貴方を尊び愛しく思う。

目の前の彼こそ、私にとっての世界であり全てだ。


「あぁ、それと。ジェイド達の同行を探らせている兵から報告がありましたか?」
「はい。カーティス大佐、グランツ響長一行の次の目的地は恐らくグランコクマとの事です。…如何なされますか?」
「…そうですね、用事が済み次第私もあちらへ行って見ます。留守は任せましたよ、ライナー」
「はい、ディスト様」


ネクタイを締め終え、私の手がディスト様の身体から離れた瞬間がとても嫌で堪らない。

私を満たす甘美な一時が消えてしまうから。


ディスト様はすぐに私から背を向け扉の向こうへと行ってしまわれた。
消えていく足音がとても悲しくて胸がざわめく。

早く、早く貴方が居ない時間が経ってしまえばいいのに。



貴方が居ない部屋なんて、ただの空間に過ぎない。


「…掃除、でもしましょうか…」

修行なんて身が入るわけが無い。
少しでも余暇があるならば、あの方の為に何か一つでも多くしておきたいと思った。


扉を開け、廊下へ出て。
教団の広さが、とても虚しく思える。


「…、…」

ふと、聞こえた兵士の雑談。
ただの、雑談ならば良かった。


『ディスト様はジェイド・カーティスに盲目過ぎる程の気狂い』


それが耳に入った瞬間、衝動的に私は動き出していた。




「…あぁ、また床を汚してしまった…」

小さなナイフから滴り落ちるは、床に転がる亡骸の鮮血。

それを無表情で見下ろし、どうしたものかと途方に暮れる。

最近、無意識に少しでもディスト様の悪評と判断できる言葉を聞けば相手に殺意が沸き、その口を封じてしまう。

もう、発作に近いのかもしれない。
衝動で目の前が真っ白になったかと思えば、次に見るのは相手の死体。

不思議と、罪悪感は無い。
むしろ、正しい事だとすら思える。

あの方も、そうだから。
ジェイド・カーティスとゲルダ・ネビリム以外はその視界に入っていない。
他は生きていようが死んでいようが、気にかける必要も無いのだ。

無感動で、無表情。
そして六神将の誰より、多くの他者の命を自身の手で作られた譜業で刈り取っていく。
その姿は血で穢れることなく、漆黒で純白なまま。

まさに、死神。


そして誰よりも綺麗。
誰よりも、穢れの無い魂。

いつも、あの人を追いかけているディスト様。
貴方はずっと前を見ている。
後ろに居る、私を見ることなく。

そんな貴方を、私は追いかけているのにも気付かずに。

追い掛けて。
追い掛けられて。

貴方があの人に追いつくのが先か。
私が貴方に追いつくのが先か。

まるで子供の遊びのよう。


追い掛けて、追い掛けられて。
追いついて、追いつかれて。


先に相手を捕まえる鬼は、どちらでしょう。
掴まったものは、どうなるのでしょうか。

追い掛ける死神。
追い掛けられる、死神。

盲目の感情が生み出す、残酷で楽しき遊戯。
貴方はいつそれに気付いて下さるでしょうか。


私は、貴方という死神の従者なのです。


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文が意味不明すぎるだろ、コレ;;

えーっと…とりあえず、マッドなライナーが打ちたかったんです;ディストがジェイドに盲目ならば、そんなディストにライナーは盲目だといいな☆みたいな…;;
追いかけている人はそれに集中しちゃって追い掛けられていることに中々気付かないしね。
捕まえるが先か、掴まるのが先か、な鬼ごっこです。
掴まったらジ・エンド(笑)

つーか補足が必要なくらい意味不明な文打つくらいならUPすんなって感じですよねー…;;反省;