■一日遅れのBirthday■

「…HAPPY BIRTHDAY.」


その言葉に、私は目を丸くした。

遠征から自宅へ戻ってきたばかりの部屋に居たのはディスト。
しかも、かなり仏頂面で苛々を隠さないままそっぽを向いている。


「不法侵入、は昔からなのでもう言うのも疲れましたが…それより、珍しいですね。」


手にしていた書類を机上に起きながらクスリと軽く笑う。
言葉が示した珍しい、は
『立ったままコチラを見る事なく苛々してる様子』と『几帳面なのに今年だけ一日遅れで来た事』
…の、二つであって。
前者は時折他の人間相手ならしていることだから、特に気にはならないのだが。

「…なんで今年は遠征なんか……」
「仕方がないでしょう?と、言うより、軍職ならば普通ですよ。」

苛々すれば爪を噛む癖が未だに直っていない相手に、小さく息を零して呆れる。

「それにしても、色々と散らかしてくれましたね…」

辺りを見渡せば、出掛ける前とは明らかに違う自室。

去年貰った―…否、押し付けられた自動日めくり譜業や時計、その他時間に関する物は散乱して
いるか、壊され無惨な姿。
どうしたものかと溜息を吐けば、ディストは恨めしそうにコチラに視線を向けた後、小さく呟いた。

「…日付が、変わって欲しくなかったんです…」

まるで罰の悪い子供のような面持ちで視線を泳がせるディスト。
時計も、譜業も、壁に掛けていたカレンダーも、全て22日。

「…全く…本当に馬鹿ですねぇ…」

そんなことをしても、時間は止まることを知らないというのに。
それを知っていながらも、時間を止めたかったディストの心情に、ジェイドは小さく苦笑する。

机上に置かれた花に気付き、ジェイドはそれを手にする。
花びらは散り、枯れかけ始めている薔薇。
ジェイドは何も言わずその花を花瓶に飾る。

「……そんなものを飾っても、みすぼらしいだけですよ?」

枯れ具合からして花は恐らく、ディストがこの部屋に来る前にダアトで買ったものだろう。
約二日近く、水を与えられていなかった花。

「花瓶にいれれば、無駄にはなりませんよ。それにこの部屋には私くらいしかほとんど居ませんから。」

だから飾るのだと、無言で伝えればディストの表情に生気が戻り来る。


「…は…HAPPY BIRTHDAY、ジェイド…」

視線を泳がせながら、何となく照れ混じりのディストの言葉に、ジェイドはなるだけ表情を見せないように
しながら薄く微笑んだ。


『来年も、また。』



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ディスジェディスなジェイドHAPPY BIRTHDAY話。
祝えるのが一日遅れただけで拗ねてそうなディスト萌ですよハァハァ(笑)
そして23日の深夜まで待ってますよこの人。
どんだけー(笑)