■感触まにあ■

別に、何かと手入れしてるワケじゃない。
フツーに暮らして、フツーに洗って、フツーにしていただけなのに。


「ん〜…お前さんの髪はふわっふわだよな〜」

そう言って、ピオニー=ウパラ=マルクト9世陛下はオイラをその膝の上に乗せて頭を撫でる。
因みに、この体勢で撫で続けられてもう1時間は経っているだろう。

「…で、オイラはいつまでこーしてればいいんでしょうか…」

撫でられるだけで、これといって何もする事が無い状態。
流石にどうしたものかと考える。


「んー?そうだなぁ…俺が飽きるまで、かな〜…」

まるで日向ぼっこでもしているかのようにのんびりした口調で答える相手に、脱力を禁じ得ない。

ただ、アッシュさんのちょっとした報告に付き合って来ただけなのに。
あれよあれよと何時の間に、相手の巧みな話術に嵌ってこうなったというワケで。

(…せめて何か自分も出来るならいいんだけど…)

触られるのは別に構わないが、ただ抱き締められて座ったままは正直、きつい。
何もする事が無いのだ。

「まぁ、もうそろそろしたらガイラルディアとアッシュも帰ってくるだろうからな」

二人は只今外出中。
ガイさんのブウサギの散歩にアッシュさんが同行している。

どちらかと言えば、自分的にはガイさんについていきたかったのが本音。

「ギンジ」
「はい?」

名を呼ばれ、背後にいる相手の方へと振り返れば。
突然頬に何かが当たる。

「ぷにぷにだな〜♪」
「…何が楽しいんですか…//;」

今度は頬が餌食。
指で突付かれ、むにむにと引っ張られ。
しかも髪は頬擦りされている。

まるでブウサギと同じ扱いだと思い、流石のオイラでも口を尖らせる。

でも、別に痛いワケじゃない。
やんわりとした動作でむにむにと触られていたら、むしろ段々眠くなってきた。

何だろう、この手で撫でられると落ち着く。



+++

「―で、何時の間にか寝ちゃったんですか…」
「おぅ。何だかんだと心地よかったらしいな」

すやすやと眠りこけてしまったギンジを眺めながら、ガイとピオニーはクスクスと笑った。

周りには同じくお昼寝をするブウサギ達。

「もう一匹増やそうかなぁ…コイツ等撫でてると癒されるんだよ」



ある、小春日和の一日のお話。