■Step by Step.■
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コツ、コツ 軽やかに床を踏み鳴らす靴音。 ステップに合わせて宙に揺らめく琥珀色にも似た髪。 長めの襟がひらりと舞う。 「…陛下、嘘をつきましたね?」 溜息混じりにそう呟いたジェイドに、ピオニーは白を切るように 「いや?さっき何と無く思い出した」 と、その顔に笑みを浮かべながら返す。 「これだけ覚えているなら…踊れるなら練習など不要でしょう?」 1、2、3… 互いの頭に浮かぶ数字。 次にやるべきステップは身体が覚えている。 「いや、たまには踊らんとな。すぐには思い出せん」 1、2、3… 会話をしていても、何か考えていても自然とステップを踏み鳴らす。 互いの手を取り、くるりと軽やかに身体を回し。 音楽は無くても踊ることは出来る。 「…ご冗談を」 1、2、3… 「ジェイド」 1、 取り合っていた手の指が絡み合う。 2、 力任せに引き寄せれば、まるでステップと同じく自然と足が相手に近寄るように床を踏む。 …3。 「…ん…」 重ねられた唇。 優しく、互いの唇の柔らかさを確認するかのような口付け。 「……俺が踊るのはお前とだけだ。」 耳元で囁かれた言葉に、ジェイドはクスリと笑う。 「…ご冗談を。」 貴方は皇帝。 私は軍人。 願わくば、このステップがずっと私だけのものであって欲しいと思った。 |