■迷い猫(※ED後捏造)■

赤に、目を奪われた。



見間違いじゃない。
見間違いなんかじゃない。

あの『赤』を、私が見間違えるものか。

…視界の端にソレを捕らえた瞬間、私は弾け跳ぶように踵を返して駆け出していた。


「カーティス大佐っ!?」

事情を知らない、取り残された部下が呼ぶ。
それを他人事のように耳に入れながらも駆け出した脚はその歩みを止めることは無かった。

もう、見失いたくない。



戻ってくる、と言った彼を信じていないわけじゃないけれど。
頭の中では冷静に、その時を待つと決めていたけど。

会いたい。
早く、誰よりも早く。

きっと私は今、この上なく情けない顔をしているのだろう。
みっともないまでに冷静さを欠き、焦り、必死だ。

しかし、私にとってそんなことはどうでもいい。

無樣だと、罵りたければ罵るがいい。好きなように嘲笑うがいい。


走って。走って。走って。

ただひたすら、会いたいと…願った。





「…気のせい、でしたか…」
町外れの丘の上。
夕日に頬を照らされ、髪は風に玩ばれ。
冷静さが頭を冷やし始めれば、胸の内を襲うのはただ一つの寂しさ。


「……ルーク…」


迷い猫は、静かに待ち人の名を鳴いた。