■死神の預言■

もう何度、言っただろうか。



「好きですよ。ジェイド」
「………」

薄暗い部屋で二人。
互いの目だけを見つめて。

私は壁に背を預け、ジェイドはただ其処に立っている。
無心の眼差しで、私を見ている。

私の心を、その目で見て量ろうとしている。


「…貴方もしつこいですねぇ…」

ジェイドは、ふぅ、と息を吐きながらわざとらしく呆れた素振りをする。

私は知っている。
こういう時に、そういう素振りをするジェイドは本当に呆れてるんじゃない。
はぐらかしたい時だ。
はぐらかして、今浮かんでいる自分の思考を切り替えたいだけ。
切り替えて、私の言葉を無かった事にしたいだけ。

無かった事にして、私の感情から目を逸らしたいだけ。


逸らさなければ、悩むから。迷うから。



ああ、なんて卑怯者だ。

そう罵りたくても意味がない事も知っている。
それをすれば、相手が余計に難無く私の感情から避けられる出口になることも。

キィキィ喚いても、意味が無い。
勿論、表面上だけでなく内面にも無意味。


もう、出口は与えない。


「愛していますよ。ジェイド」

なおも、視線を逸らさずに一言。
まだ、相手もこちらから目を離していない。
お互い、互いの心を推し量る。

退かせることはしない。
させない。
させてやらない。

さあ、私だけを見て下さい。
そして、私の気持ちをその目で、その頭で知りなさい。



それが出来た時は、私が貴方を捕らえた瞬間。


「好きです。愛しています。これまでも。これからも、ずっと」

愛の言葉を述べるには、とても不釣合いな眼差しかもしれないけれど。
相手を射竦めなければ、きっとまたはぐらかされる。逃げられる。

私が本気なんだと、言うのをジェイドは知っている。



だから、逃げたいんだろう。
愛されるのが怖いから。
受け取る事は、未知だから。

どこまでも、臆病なんでしょうか。
それがまた、愛しいと思える私も愚かしい。

他人に全てを委ねてしまうのは、恐ろしい。
でも、自分に全てを委ねて欲しいと思うのは、必然。

長い年月、貴方が私の世界です。
貴方を行動源にして、生きてきました。
生半可な気持ちじゃ、ありませんから。



「……私は貴方を愛してなんていませんよ」

そう呟いたジェイド。
でも、負けだ。
目を逸らした。
目を逸らして、言った。

精神的に、迷いが生じている証拠。


「嘘ですね。」

間髪入れずにそう一言告げると、下を向いているジェイドの瞳が微かに揺れた。

「いいえ、嫌いです」
「それも嘘ですね。ジェイド」
「それが嘘であるという証拠は?」
「貴方がそう言う風に問い掛ける時点で、貴方が迷っているからです」


本気なら、断言する。
拒絶の言葉で。
その深紅の譜眼で。


「愛しています」
「………」

我ながら、酷く強引だと思う。
酷く、盲目的だと思う。
でも、それでも私には貴方が絶対的な存在なんです。

「ジェイド…」

コツ、と靴音を鳴らす。
近くなる、ジェイドとの距離。
一歩、また一歩。

近づいた、ジェイドとの距離。


そっと、手を伸ばし。
その頬に触れてみた。
その髪に、指を通してみた。

ジェイドは視線を下に向けたまま、動かない。
その目を見ると、心は激しく動いているようだ。


あと少し。
あと少し近づけば。


「貴方は私が捕らえる」


もう。
予定でも、願いでも無い。
ましてや夢なんかでも無い。

これは、確定された予告。
必ずそうなるという言葉。

私は私の世界を象る存在を、手にする。



これは、死神が詠む、預言。

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よし、いつも通り微妙な出来だ!!+(コラ)
うーんやっぱりイメージソングないと駄目駄目だなこの野郎…;orz
一応、ほのかに『泪月-oboro-』っぽい感じなんですが違う…。あれは恋を無くして哀願するような歌だし…

とりあえず、死神っぽいディスト打てたからいーや。
所詮自己満足さ!いぇあ!!(何)

次は薔薇っぽいディスト打ちたい(笑)