■お酒は危険。■

お酒というものは人を心地良くさせたり、抑制されたものを解放したりする。

故に、昔からの格言に非常に勉強になる言葉もあるわけで。


『酒は飲んでも、呑まれるな』


…まさに、その通りだと思う。




「へーかー、聞いてますかぁー?!ひ…っく…」


見事に泥酔し、自分に絡んでくるギンジを見て、ピオニーはガクリと肩を落とした。

頭に思い描いていたものと現実は違うと、まさかこの場面で痛感しようとは。


「予想外だ…」


色んな意味で落胆しながら、ピオニーは持っていたグラスの中身を一気に喉へと流し込んだ。



「オイラがこんな風に酔っちゃ駄目ってゆーんですかぁ?!」
「うぉ!?わ、悪い悪い…」

突然、ダイビングして突撃してきたギンジは、衝撃で押し倒されたピオニーの胸倉を掴みながらうー、と
警戒する犬みたいに唸った。
普段が普段なだけに、今のこの様子はとても新鮮且つ斬新だ。
どう対処すべきか、ピオニーが思い悩んでいると、ギンジは何かを思いついたのか、もそもそと動き始める。


「え、オイ、ちょ…!」
「へへ〜♪」

緩んだ頬でへらへらと笑顔全開ながら、ギンジはピオニーの上に馬乗りになり、手を後ろに伸ばしてピオニーの下肢を
ぽふぽふと叩いてきた。


勿論、男として一番際どい所、を。

「ちゃーんとここ使ってますか〜ぁ?枯れてるわけじゃないんでしょー?」

ケラケラと笑顔だけは無邪気に笑うギンジに、ピオニーは恥ずかしいやら色々複雑な気分で。

「枯れてるわけないだろうが。俺はまだ30代なんだぞー?」


呆れながらも、一応言葉を返す。

皇帝にもなって酔っ払いの相手をするとは…と内心では呆れ半分、変な面白さ半分。
ぼやー、っとした面持ちでそれを聞いていたギンジは、そわそわした動きで上半身だけ軽く反転すると、またぽふりとそこを叩いた。


「…何がしたいんだお前は…」

気恥ずかしくなり、そう尋ねると、ギンジは口を軽く尖らせ。

「使えるならちゃんと使って下さいね〜?お世継ぎ問題とか周りの人困ってますよー?」

泥酔してる時にすら周りの心配する辺り、ギンジらしいと言えばらしいのだが、せめて指先で突付きながら話すのは
止めて欲しい、とピオニーは微妙な気分だった。


「…あ、あのなー…というかあんまり触るなよ…」


正直、最近は忙しくて『ご無沙汰』なのだ。

あまり触られていると…何とも言えない気分というか欲が湧き上がってくる。
こんな事なら、先に退室してしまったガイラルディアとジェイドを引きとめておくべきだったか、と、ピオニーは内心で
苦笑交じりに舌打ちする。


「へーかー…」

段々眠くなってきたのか、ギンジはそのままピオニーの上に倒れこんだ。
丁度、際どい部分の上にギンジの頭が崩れ落ちる。


「っちょ…お前そんな場所で寝るなー!!;」

本気で焦ったピオニーは、ギンジの腕を強く引っ張り、上半身の方へと倒れこませた。

どちらにせよ自分の上で寝転ぶのには変わりないが、下半身に寝転がられるよりは数倍マシだ。

さっきから赤く火照り、とろんとした表情で自分の下肢を突付いているギンジを見て、理性が少し危険になりそうだったのだから。

「むー…」

胸の上でもぞもぞと動くギンジ。
寝やすい位置を探しているのだろうか。
ふと、上を向いたギンジと目が合う。

「…へへ〜♪」

何が嬉しかったのか、それともこれも酒の力なのだろうか。

ギンジは目が合っただけなのに、ふにゃりと嬉しそうな笑顔を見せる。
…下品な話だが、正直、胸の奥と下半身が脈打ったのは内緒の話。


「あー、もう…寝ろ、馬鹿」

はぁ、と溜息をついて気を紛らわせ、寝かしつける為に額に一度キスしてやれば。
ギンジは一瞬きょとんとしたが、またすぐにへらりと笑みを見せて今度は自分からピオニーの頬にキスをしてきた。

元々、こういったスキンシップが好きな方なのか。
此方も同じように返してやれば、ギンジはクスクスと可愛らしく笑いながらもまたし返してくる。
普段は男らしくなることを頑張ってるか、こういった仕草は中々見せてくれない。

妙に…余計、可愛く思えてくる。


「ん、ん…」

ちゅ、ちゅ…と触れるだけのキスを唇にもしてやれば、ギンジも同じように。

何だか、楽しい。

ギンジは少し顔をずらし、今度は鎖骨にもキスをしてきた。

「んっ…」

遊びのような戯れから、性的な刺激がある戯れへと行為が変わった。
肌へ触れる度に見え隠れするギンジの唇がいやらしく見える。
徐々に流されてきたのか、ピオニーは理性を溶かしていく。

だが、好きにさせている内に寝てしまったのか、ギンジはピオニーの胸の上ですやすやと寝息を立て始めた。


「…寝たのか…ま、いっか。」

ぽふりとギンジの背を叩き、ピオニーも酔いは醒めていきながらも、自分もそのまま眠りに落ちることにした。




+++

「…っっとーにすみませんでしたぁあー!!!」

朝、起きると。

眠気を吹き飛ばすかのような勢いでギンジが土下座していた。


「あー…」
「すみません、ごめんなさい!!不躾というか失礼というか無礼なことしてしまって…!!」

どうやらギンジは酔いつぶれても記憶はしっかり残るタイプらしい。
昨夜の行為を必死に謝って来た。


「いや、別に気にしてないぞ?それなりに面白かったし…」

後頭部を掻きながら、欠伸交じりにそう言うもギンジは泣きそうなくらいに落ち着きが無い。

どこまでも小市民な根性がある平民。
自分が皇帝陛下という身分だから、というのもあるかもしれないが。


「本当、すみません…」
「気にするなって。んー…まぁ、酒は控えろよな?」
「はい…」

しゅん、と垂れた犬耳が見えるような様子の相手に、微妙に可愛らしさを感じながらもピオニーはギンジの頭を撫でてやる。


控えろと言ったが、ピオニーは次、いつ酒を飲ませようかと内心で計画をたてていた。



たまには小悪魔を見るのもいいだろう。


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ちょっとした下ネタちっくな文が打ちたかっただけです(笑)
私に勇気と根性があればもうちょっと変態っぽくしたかったんですが…うん、恥ずかしいから!!;;
これでも『このサイトの小説で打ってて一番恥ずかしい小説な気がするよ…コレ…』とか考えてました;

逆セクハラギンジ、楽しかったです(笑)
本音言うとギンピオ風味なくらいまでがっつり色々したかったですが…長くなると色々面倒なので;