■約束の行方■

「ディスト…様」



久方ぶりに見た部下は、また少し細くなった気がした。



「ここに、こんな所におられたのですね…っ」


切なげに、声を震わせながら彼―…ライナーは床に膝をつき、冷たい鉄の格子をその手で握り締める。

私を視界に入れてから、少しも目を離さないその様子に、胸の中を少しだけ引っ掛かれたような心地がした。


「ディスト様、ディスト様…っ」

何度も、何度も名を口にしながら。
その目からぼろぼろと雫を落とし濡らしては。
心底、安堵した表情を私に向ける。

何故だか直視に耐え切れず、私は咄嗟に目を逸らす。

私は、私の道を追求し、願いを叶えるために生きているのだ。
そのために、どんな辛い事も耐える事ができた。
あきらめなかった。


だが、彼を見ているとその行為をした自分に罪悪感を感じて仕方ない。

私は私の信じる道を歩んできたというのに。
後悔は全く無いのに。

ああ、この瞳は見るに堪えない。



「帰りなさい、ライナー」

「…え…?」

「聞こえませんでしたか?…ダアトに戻りなさい。」


表情を無くしたライナーに、私は、冷たくそう告げる。


「ディスト様…?」

何故、と問い掛ける瞳。


ああ、見たくない。

胸の中が不快だ。
頭を抱えたくなる。

感じる必要の無い罪の意識を突き付けられる感覚だ。



「…私はもう、六神将でも、ダアトの人間でもない、ただの罪人ですよ。貴方とは関わりが無いはずです」

「ディスト様…っ」


言葉を返そうとした彼に、冷えた視線を向ける。

「わ…かりました…」


ライナーは堅く握り締めていた鉄格子から、その指を名残惜しげにゆっくり離し始めた。

少しでも、そこに居長らえるために。

たとえそれが、ほんの数秒なのだとしても。




「…また、来ます。」

去り際、哀しげな笑みで私に会釈していった。


…また?
叶うかわからぬ事を、言うなんて。

貴方はダアトの人間で、今はもうクラスも上がったはず。
今日だって、修業と任務を無理矢理終わらせて来たのだろう。
簡単に、ダアトからでられるはずが無い。


私はもう関わりの無い人間です。
この国に捕われた、罪人だ。
いくら皇帝や軍人が知人だとしても、いつ、処刑されてもおかしくはない程の罪人。

罪を負う事すら躊躇わず、禁忌まで犯したというのに。
叶わなかった、哀れな人間。


「また、会えるなんて保障は無いんですよ、ライナー…」



『ジェイド!約束だよ?絶対二人でフォミクリーを完成させて先生を…』

『…また来ます、ディスト様』


約束というのは、何て残酷なのだろう。

いつまでも、気持ちを縛り付ける。




貴方には、こんな私を見られたくなかった。

■■■■
ネビリムイベント後、捕まったディストに会う為にマルクトに来たライナー。

…マジでライナー可愛いなぁ、ちくしょ。(笑)


ライナーはディスト様さえ居れば…!的な子だと萌エス。
そしてディストは後からライナーの存在の有り難みに気付くといいよ!
灯台下暗し愛だよ、バーカ!(笑)


相変わらずお粗末な文で申し訳ないです;orz