■Carrot and stick■

「今時、あんな子は早々いませんね」



机に置かれた書類をまとめながら、幼馴染みである『死霊使い』がその口元を愉しげに歪める。
その視線の先には、テーブルの上に置かれた小さな包み。

「…むしろ、乙女な感じもするがな」

執務を一気に終わらせた疲れか、ピオニーはぐったりとソファにその身を沈めていた。
同じく視線はテーブル上の包み。
そして書類を確かめている幼馴染みへと移る。


「…はい。確かに、全部終わっていますね」
「やたっ!」

まるで「お預け」を解除されたような犬のように、ピオニーはソファから勢い良く立ち上がるとその包みへと手を伸ばした。
一国の皇帝ともあろうものが、まるで欠食児童のようだ…とジェイドは半ば呆れつつも笑う。


(まさかここまで効果があるとは…)


近頃、書類の確認が遅れているとの声があり、考えた作戦。
恐らく、「恋人」不足なのだろうと考えてみれば、どうやらそれは正解だったようで。
意外と菓子類が好きなこの皇帝のために、密かに彼の恋人であるギンジに頼み、クッキーを焼いてもらったのだ。


「お前にはやらんからな、ジェイド!」
「私は既に試食の時に頂きましたので♪」
「な…っ!俺より先に食うとは」
「陛下、早く食べないと散歩から帰ったブウサギ達にねだられちゃいますよ?」
「…ぐ…っ」

そう言われ、未だ残る子供じみた不満をブツブツと言いながらもピオニーは包みを開く。

「……。」
「どうしました?」

動きを止めた彼に、ジェイドが問い掛ける。

「…コレを、俺に食えと…?」

クッキーを一つ、手に取り失笑を浮かべた。
それは何とも可愛らしい、ブウサギを型どったもので。


「あぁ、陛下がブウサギ好きだからでしょうね。」
「た、確かに好きだ…だからこそこれを食うのは…っ!!」


まるで、ルークやナタリアの料理を目の当たりにしたかのような苦悶の顔。
心底溺愛しているペットだからこそ、なのだろうか。
いくら恋人の手作りのクッキーでも食す事に抵抗が見える。


「おや、残念ですねぇ。折角、貴方が執務でお疲れだから甘いものが欲しいだろうと思って彼が作ったと言うのに。
…食べられないのなら私が頂きますね?」

「…ぅ…」


にこりと微笑みながらそう言えば、ピオニーは更に言葉をつまらせる。


「あんなに貴方の喜ぶ顔を楽しみに作っていたんですがねぇ…。」


すぐにその笑顔が頭に浮かんだのか、更にピオニーはたじろぐ。


「お前ら、もしかしなくてもグルか…?」

「嫌ですね、人聞きの悪い。」

「…俺のギンジをお前みたいな小悪魔にしたらただじゃおかねぇからな…」

「おや、彼ならば悪戯っ子でも可愛いとおっしゃっていたのは何処の誰ですかね」


クスクスと笑ってやれば、ピオニーはがくりとうな垂れた。




あぁ、楽しい。
これに懲りたらちゃんと仕事をしてくださいね?

■■■■
ピオギン・ジェイド視点で『飴と鞭』(笑)
執務をさぼっていたピオニーに酷な仕打ちです(笑)
というかCarrot and stickで英文あってます…よね?;
翻訳サイトで訳したんですがイマイチ信用してません(コラ)


因みにピオ様、食べるか否かで葛藤してる間に戻ってきたブウサギ達にクッキーを食べられて凹みます。
そして食べてもらえなかったギンジは平気なフリしつつもガイの胸借りて泣きます。(笑)
その現場をピオ様はジェイドの巧みな誘導でうっかり見ちゃって更に凹みます。(酷ぇ…/笑)


やばい、私が楽しい(笑)